Few-shot と Chain-of-Thought(実践テクニック)

25分初級〜中級

このモジュールで学ぶこと

  • Few-shot prompting の正しい組み立て方
  • Chain-of-Thought(CoT)で精度を上げる方法
  • Zero-shot CoT(「ステップ・バイ・ステップで考えて」)の使い所
  • Role prompting(役割付与)と Structured output の応用

学習目標

  • Few-shot で例示を3個用意し、業務タスクの精度を上げられる
  • 複雑な意思決定で CoT を発動させられる
  • Role 指定と出力形式を組み合わせて、業務に直結する応答を得られる

目次


セクション1: Few-shot prompting の本質

Few-shot とは「いくつかの例を見せてから本題のタスクを依頼する」テクニックだ。

研究では、巨大言語モデルが少数の例示から パターンを学習する能力 を持つことが示されている。

出典: Brown et al. (2020) "Language models are few-shot learners"(Wikipedia "Prompt engineering" 経由・取得日: 2026-05-20・URL: https://en.wikipedia.org/wiki/Prompt_engineering

基本構造

maison → house
chat → cat
chien →

これだけで「フランス語 → 英語」のタスクが伝わる。明示的に「翻訳して」と書かなくてもよい。

業務での Few-shot 設計

業務でFew-shotを組むときは、以下の3点を意識する。

  1. 例は2-5個(多すぎても精度は伸びない)
  2. 多様性のある例を選ぶ(簡単・標準・難しい のバランス)
  3. 本題と同じ形式で書く(入力と出力の対応を一貫させる)

良い Few-shot の例

顧客からの問い合わせを「製品」「請求」「契約」「その他」に分類してください。

例1:
入力: 「ログインできません」
出力: 製品

例2:
入力: 「今月の請求書はいつ届きますか」
出力: 請求

例3:
入力: 「来月で解約したいです」
出力: 契約

例4:
入力: 「サポート営業時間を教えてください」
出力: その他

分類対象:
「パスワードを忘れました」

このように 入力 / 出力のペア を明示するのが王道だ。


セクション2: Chain-of-Thought の原理

Chain-of-Thought(CoT)とは、最終回答の前に推論プロセスを書かせる テクニックである。

CoTは算数・常識推論・複雑な意思決定で精度を上げることが研究で示されている。

出典: Wei et al. (2022) "Chain-of-Thought Prompting Elicits Reasoning in Large Language Models"(Wikipedia "Prompt engineering" 経由・取得日: 2026-05-20・URL: https://en.wikipedia.org/wiki/Prompt_engineering

CoT を使わない例

質問: あるカフェには1日150人が訪れます。
平均客単価は800円です。月の営業日数が25日のとき、
月商はいくらですか?

回答: 3,000,000円

正しいが、 過程が見えない ので検算できない。

CoT を発動させる書き方

質問: あるカフェには1日150人が訪れます。
平均客単価は800円です。月の営業日数が25日のとき、
月商はいくらですか?

ステップ・バイ・ステップで考えてから、最終回答を出してください。

回答:
ステップ1: 1日の売上 = 150人 × 800円 = 120,000円
ステップ2: 月商 = 120,000円 × 25日 = 3,000,000円
最終回答: 3,000,000円

過程が出ると 検算と修正が可能になる。業務で使うときに極めて重要な性質だ。


セクション3: Zero-shot CoT の威力

CoTのために例を用意するのは手間がかかる。そこで使えるのが Zero-shot CoT だ。例を一切示さず、プロンプトの末尾に「ステップ・バイ・ステップで考えてください」と書くだけ でCoTが発動する。

出典: Wikipedia "Prompt engineering" Zero-shot CoT(取得日: 2026-05-20・URL: https://en.wikipedia.org/wiki/Prompt_engineering

Zero-shot CoT を仕込むキーフレーズ

英語: Let's think step-by-step. 日本語: ステップ・バイ・ステップで考えてください。

このフレーズを末尾に追加するだけで、複雑な推論タスクの精度が上がる。

業務での適用例

  • 提案書の論点整理
  • 競合分析のフレーム展開
  • 採用面接の評価基準分解
  • バグ原因の切り分け

「結論だけ欲しい」ではなく「過程込みで欲しい」場面では、必ずZero-shot CoTを仕込む。

注意点

Zero-shot CoTは Thinking 系モデル(GPT-5.5など)では既定で発動している ことが多い。Fast系モデルで使うときに特に効果が大きい。


セクション4: Role prompting

役割を与えると、ChatGPTは その役割の知識フレームと語彙 で応答するようになる。

出典: Wikipedia "Prompt engineering" Role Assignment(取得日: 2026-05-20・URL: https://en.wikipedia.org/wiki/Prompt_engineering

役割なし

当社の経営戦略についてアドバイスを

役割あり

あなたは中小企業の経営コンサルタントです。
15年の実務経験があり、製造業の事業承継案件を50件以上扱ってきました。

この立場から、以下の経営課題を分析してください。
(以下、業務状況の記述)

役割を与えると、 その分野の典型的な論点・用語・フレームワーク が応答に組み込まれる。

効果的な役割の書き方

  • 職種(経営コンサル・人事・エンジニア など)
  • 経験年数
  • 専門領域
  • 過去の代表的な案件

「優秀な〇〇」のような曖昧な形容詞ではなく、 具体的なバックグラウンド を書く。


セクション5: Structured output

最後に、 出力を構造化する テクニックを整理する。

JSON 出力指定

以下の文章から、氏名・年齢・職業を抽出し、JSONで返してください。

文章: 「田中さんは45歳の建築士です」

出力形式:
{
  "name": "...",
  "age": ...,
  "occupation": "..."
}

JSON出力は 後続の自動処理に直結 するため、システム連携で重宝する。

マークダウンテーブル

以下の3社を Pricing / 機能 / 対象規模 で比較し、Markdownテーブルで出力してください。

YAML

プロジェクト計画を以下のYAML形式で出力してください。

phases:
  - name: ...
    duration: ...
    deliverables: [...]

セクション6: 組み合わせの実例

5原則(前モジュール) + 本モジュールのテクニックを組み合わせた 業務レベルのプロンプト を示す。

あなたは中堅製造業の人事責任者です。15年の人事経験があります。

以下の状況を分析し、ステップ・バイ・ステップで論点を整理してから、
最終的に「打ち手3つ」をJSON形式で返してください。

状況:
- 採用ターゲット: 高卒新卒(製造ライン担当)
- 課題: 内定辞退率が前年比+30%
- 制約: 採用予算は据え置き
- 期限: 来月の経営会議で報告

例(参考形式):
{
  "step1_observations": [...],
  "step2_root_causes": [...],
  "step3_actions": [
    { "title": "...", "expected_impact": "...", "cost": "..." }
  ]
}

注意:
- 一般論ではなく、製造業の高卒採用に特化した内容にすること
- 「採用ブランディング」のような抽象語ではなく、具体的な施策で書くこと

このレベルのプロンプトを テンプレ化して業務に組み込む ところが、ChatGPT実務活用の本丸だ。


まとめ

  • Few-shot は2-5個の多様な例で精度が伸びる
  • Chain-of-Thought は最終回答の前に推論プロセスを書かせる
  • Zero-shot CoT は「ステップ・バイ・ステップで考えてください」だけで発動
  • Role prompting で職種・経験年数・専門領域を与える
  • Structured output(JSON / Markdownテーブル / YAML)で後加工を消す
  • 5原則 + 本テクニックを組み合わせて業務テンプレを作る

次のモジュールではファイル添付・画像入力・Canvas・音声モードの活用に進む。

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