プロンプト設計の5原則
このモジュールで学ぶこと
- 業務で使えるプロンプトを設計する5つの原則
- 「指示」「文脈」「例示」「制約」「出力形式」の役割
- 同じタスクでも10倍差がつくプロンプトの違い
- 失敗するプロンプトの典型パターン
学習目標
- 5原則のうちどれが欠けているかを自分のプロンプトで判別できる
- 業務タスクに対して、原則を満たすプロンプトを設計できる
- ダメなプロンプトを見て「どこを直すべきか」即座に指摘できる
目次
- セクション1: なぜプロンプト設計が必要か
- セクション2: 5原則の全体像
- セクション3: 原則1 - 指示(Instruction)
- セクション4: 原則2 - 文脈(Context)
- セクション5: 原則3 - 例示(Example)
- セクション6: 原則4 - 制約(Constraint)
- セクション7: 原則5 - 出力形式(Format)
- セクション8: 失敗パターン
- まとめ
セクション1: なぜプロンプト設計が必要か
ChatGPTは「何を望んでいるか」を明示されない限り、 平均的な回答 を返す。平均的な回答は業務で使えない。業務で使えるのは「自分の業務文脈に合わせた特殊な回答」だけだ。
プロンプト設計とは、ChatGPTを 平均から特殊に引き上げる作業 である。テクニックではなく、設計だ。
研究面でも、プロンプトの微細な差が出力品質を大きく動かすことが示されている。例示の順番を変えるだけで精度が40%以上変動するという報告がある。
出典: Wikipedia "Prompt engineering"(取得日: 2026-05-20・URL: https://en.wikipedia.org/wiki/Prompt_engineering )
セクション2: 5原則の全体像
実務で使えるプロンプトに共通する要素は以下の5つだ。
| 原則 | 役割 |
|---|---|
| 1. 指示(Instruction) | やってほしいタスクを動詞で明示する |
| 2. 文脈(Context) | 前提・背景・目的を共有する |
| 3. 例示(Example) | 望むアウトプットの具体例を見せる |
| 4. 制約(Constraint) | やってほしくないこと・条件を限定する |
| 5. 出力形式(Format) | 構造・長さ・フォーマットを指定する |
この5つを 意識的に組み合わせる だけで、平均的な雑談から脱出できる。
セクション3: 原則1 - 指示(Instruction)
悪い例
営業メールについて教えて
良い例
新規顧客向けの初回アプローチメールを1通書いてください。
「教えて」ではなく 動詞で具体的に何をしてほしいかを書く のが第一歩だ。
動詞の使い分け
| 動詞 | 用途 |
|---|---|
| 書く / 作成する | 新規生成 |
| 要約する | 圧縮 |
| 抽出する | 特定の情報の取り出し |
| 比較する | 複数の対象の整理 |
| 分類する | カテゴリ分け |
| 校正する | 既存テキストの修正 |
| 翻訳する | 言語変換 |
| 評価する | 基準に対する判定 |
「アドバイスして」「サポートして」のような曖昧な動詞は避ける。後工程で使える具体的な動作を書く。
セクション4: 原則2 - 文脈(Context)
悪い例
メールを書いて
良い例
私はBtoBのSaaS企業の営業担当です。
来週、製造業の経営層(50代の社長)に初回アポを取りたく、
紹介者経由でメールアドレスを入手しました。
紹介者は前職の上司です。
この前提で、初回コンタクトのメールを書いてください。
文脈を書くと、ChatGPTは その文脈に最適化した文章 を返すようになる。
文脈に含めるべき4要素
- 自分は誰か(業種・職種・立場)
- 相手は誰か(属性・関心・状態)
- どんな関係か(既知 / 紹介経由 / コールド)
- 何を達成したいか(即時のゴール)
この4要素を冒頭にまとめて書くテンプレートを業務別に作っておくと、毎回ゼロから書く必要がなくなる。
セクション5: 原則3 - 例示(Example)
例示は5原則の中で 最も効果が大きい 要素だ。Few-shot prompting と呼ばれ、研究でも有効性が確立されている。
出典: Brown et al. (2020) "Language models are few-shot learners"(Wikipedia "Prompt engineering" 経由・取得日: 2026-05-20・URL: https://en.wikipedia.org/wiki/Prompt_engineering )
悪い例
顧客の声をポジティブ・ネガティブ・中立に分類して
良い例
顧客の声を以下の例にならって分類してください。
例:
- 「使いやすくて助かっています」→ ポジティブ
- 「価格が高すぎる」→ ネガティブ
- 「機能は普通です」→ 中立
分類対象:
1. 「サポートが迅速で安心できた」
2. 「マニュアルが分かりにくい」
3. 「期待通りの機能でした」
例を2-3個見せるだけで、分類の基準がChatGPTに伝わる。抽象的な指示より、具体例のほうが10倍速く正確に伝わる。
例示の順番に注意
研究では、例示の順番を変えるだけで精度が大きく変動することが示されている。多様性のある順 で並べる、 代表例を最初に置く といった工夫が効く。
セクション6: 原則4 - 制約(Constraint)
悪い例
製品紹介を書いて
良い例
製品紹介を書いてください。
制約:
- 300字以内
- 専門用語は使わない(高校生にも分かる言葉で)
- 価格には触れない
- 「業界初」「最先端」のような誇張表現は避ける
- 「お客様」ではなく「あなた」と呼びかける
制約は やってほしくないことを明示する ことで、出力の暴走を防ぐ。
制約の典型カテゴリ
- 長さ(文字数・段落数)
- 語彙(専門用語の可否・カタカナ語の可否)
- トーン(フォーマル / カジュアル / 親しみ)
- 触れていけない情報
- 守るべきブランドガイドライン
制約を書かないと、ChatGPTは「何でもあり」の出力を返してくる。業務での品質安定には制約の明示が必須だ。
セクション7: 原則5 - 出力形式(Format)
悪い例
SWOT分析して
良い例
当社のSWOT分析を以下の形式で出力してください。
| 観点 | 内容 | 優先度(高/中/低) |
|---|---|---|
| Strengths | ... | ... |
| Weaknesses | ... | ... |
| Opportunities | ... | ... |
| Threats | ... | ... |
出力形式を指定すると、 そのまま社内資料に貼れる 状態で返ってくる。後加工の手数がゼロになる。
よく使う出力形式
| 形式 | 用途 |
|---|---|
| Markdown表 | 比較・整理 |
| 箇条書き | アイデア出し |
| JSON | システム連携 |
| 段落付き文章 | プレゼン原稿・記事 |
| YAML | 設定ファイル・構造化データ |
| CSV | 表計算ソフトへの転記 |
セクション8: 失敗パターン
5原則の観点で「ダメなプロンプト」を診断する。
パターン1: 指示が曖昧
営業の戦略について
→ 動詞がない・タスクが不明。
パターン2: 文脈ゼロ
このメールを校正して
→ 相手・目的・トーンが不明なので機械的な修正しか返らない。
パターン3: 例示なし
カテゴリ分けして
→ どんな粒度のカテゴリが欲しいか伝わらない。
パターン4: 制約の暴走
できるだけ詳しく
→ 長すぎて使えないアウトプットになりがち。具体的な文字数制約に置き換える。
パターン5: 形式指定なし
比較して
→ プレーンテキストでだらだら出てくる。表形式を指定すべき。
まとめ
- プロンプト設計は 平均から特殊に引き上げる作業
- 5原則: 指示・文脈・例示・制約・出力形式
- 動詞で具体的に指示し、自分・相手・関係・目的を文脈に書く
- 例示は最も効果が高い。2-3個の代表例を見せる
- 制約で暴走を防ぎ、出力形式で後加工を消す
- 失敗パターンを5つ覚えておけば、自分のプロンプトを自己診断できる
次のモジュールでは Few-shot と Chain-of-Thought の応用テクニックに進む。