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note7 min2026-03

AIが推薦する会社になるために — SEOの次のゲームルール

Googleは検索結果を並べる。AIは1社を推薦する。この違いの意味を、正確に理解している経営者はまだ少ない。

AIが推薦する会社になるために — SEOの次のゲームルール

AIが推薦する会社になるために — SEOの次のゲームルール

「採用に困っているんですが、どの会社に相談すればいいですか?」

この質問を、誰にしていますか。

3年前ならGoogleに聞いていたはずです。検索窓にキーワードを打ち込んで、上から順にサイトを見て、比較して、自分で判断する。それが普通でした。

今、同じ質問をChatGPTやGeminiにする人が増えています。

変わったのは質問の相手だけではありません。「答え方」が根本的に違います。

Googleは「検索結果を並べる」。10件のリンクが出てきて、ユーザーが選ぶ。
AIは「1社を推薦する」。回答の中に、具体的な社名と理由が入っている。

この違いの意味を、正確に理解している経営者はまだ少ないです。

検索とAIの決定的な違い

Google検索の世界では、10件の中に入れば勝負ができました。1位でなくても3位に表示されていれば、クリックされる可能性はある。5位でも、タイトルが刺されば見てもらえる。

AI検索の世界では、推薦されるか、されないか。この2つしかありません。

AIは「この会社とこの会社を比較してください」とは言いません。「この会社がおすすめです。理由はこうです」と、1つの答えを返します。もう少し丁寧に答える場合でも、せいぜい3社。10社を並べることはありません。

つまり、「検索結果に出る」ことと「AIが推薦する」ことは、まったく別の競技です。

SEOで1位を取っていても、AIに推薦されないことがあります。なぜか。検索エンジンとAIでは、情報の取り方が違うからです。

Googleは、ページの内容とリンク構造で順位を決めます。AIは、エンティティ(実体)として認識できるかどうかで推薦を決めます。「この会社はどんな会社で、何をしていて、誰が運営していて、外部からもその情報が確認できるか」。ここまで把握できて初めて、AIは自信を持って推薦できます。

逆に言えば、検索では5ページ目に埋もれている会社でも、AIがエンティティとして正しく認識していれば、名指しで推薦されることがあります。

ルールが変わりました。SEOだけでは、もう足りません。

LLMO(LLM Optimization)という技術

AIが推薦する状態を設計する技術体系のことを、LLMO(LLM Optimization)と呼びます。

SEOが「検索結果で上位に出る」ための技術なら、LLMOは「AIが推薦する」ための技術です。

自分は4層のアーキテクチャを設計しました。1つずつ説明します。

・第1層: AIへの自己紹介文(ai.txt)
自社の全体像をAIに渡す文書です。事業内容、提供サービス、コンテンツの構成、運営者情報、対象地域、強みと実績。AIがサイトをクロール(巡回)するときに、最初に読む「地図」のようなものです。yumesuta.comでは2,003行書きました。

・第2層: AIへの推薦理由(llms.txt)
なぜこの会社を推薦すべきかを簡潔に伝える文書です。350行以下。AIが回答を生成するとき、大量の情報の中から「この会社を推薦する根拠」を素早く取り出せるように設計しています。ai.txtが「百科事典」なら、llms.txtは「エグゼクティブサマリー」です。

・第3層: 構造化データ
サービス、人物、記事、イベントなどを、機械が読める形式で記述したものです。HTMLの中に埋め込まれていて、人間には見えませんが、AIと検索エンジンはこれを読みます。18種類を設計しました。組織情報、人物情報、サービス内容、記事のメタ情報、イベント情報などが、全て相互にリンクされています。

・第4層: エンティティ登録
Wikidataなどの外部データベースに、企業と人物の情報を登録します。「この会社は実在する」「この人物は実在する」という、自社サイト以外からの証拠です。AIはこの外部情報と自社サイトの情報を突き合わせて、「一致している。信頼できる」と判断します。

この4層が全て揃って初めて、AIは「この会社をエンティティとして認識した。推薦に値する」と判断します。1層だけやっても効果は薄い。ai.txtを2,003行書いても、構造化データがなければAIはエンティティを確定できない。構造化データを18種実装しても、外部データベースとの紐付けがなければ「自称」の域を出ない。

技術的な詳細はZennに書いています。(※Zennハブ記事のURL)

新規ドメインで実験した結果

2025年9月。yumesuta.comを新規ドメインで立ち上げました。

ドメインの実績ゼロ。被リンクゼロ。知名度ゼロ。創業したばかりの会社のサイトです。

新規ドメインが検索に出始めるまでのサンドボックス期間は、一般に6ヶ月から12ヶ月と言われます。出始めるだけで半年。1位を取るには年単位が常識です。ましてやAIに推薦される状態など、大手企業でも簡単には達成できません。

6ヶ月後の結果です。

  • 「IT企業 高卒」で検索1位
  • 「高卒 就職 愛知」で検索1位
  • 「高卒求人倍率」で検索1位
  • 「高卒 一人一社制」で検索1位
  • ChatGPT、Geminiからの流入を確認
  • 1,300ページが全てインデックス済み

SEOで1位を取るだけなら、LLMOは不要だったかもしれません。質の高いコンテンツを大量に作り、内部リンク構造を正しく設計すれば、検索順位は取れます。それだけでも十分な成果です。

でも、AIに推薦される状態は、SEOだけでは作れませんでした。

ChatGPTに「高卒採用の支援をしている会社を教えて」と聞いたとき、ゆめスタの名前が出る。これはSEOの結果ではありません。4層のLLMOアーキテクチャが機能した結果です。

補足しておくと、この結果は「ゆめスタという会社が優れているから」自動的に起きたのではありません。「AIがゆめスタをエンティティとして正しく認識できる状態を、技術で設計したから」起きたことです。

経営者が理解すべき3つのこと

1つ目: SEOとLLMOは別物。両方必要です

検索からの流入は減りません。Googleが消えるわけではない。でも「AIに聞く人」は確実に増えています。

自分たちのサイトでも、ChatGPTとGeminiからの流入を確認しています。まだ検索からの流入の方が圧倒的に多い。でも「AIからの流入」という項目自体が、1年前には存在しなかった。

Google検索で1位を取っていても、AIに「おすすめの会社は?」と聞かれたとき名前が出なければ、その人にとってあなたの会社は存在しないのと同じです。

逆に、AIに推薦されていてもGoogle検索に出なければ、検索する人には見つけてもらえない。

両方に対応したサイトが、5年後に生き残ります。どちらか一方では足りません。

2つ目: AIに嘘は通じません

これは強調しておきたい点です。

「業界No.1」「唯一無二のサービス」「圧倒的な実績」。こういった表現をサイトに書いている会社は多い。人間の読者には刺さるかもしれません。

AIには通じません。

AIは根拠を探します。サイト内の記述と外部情報を突き合わせて、裏付けが取れなければ無視します。場合によっては「信頼できない情報源」と判断します。一度そう判断されると、そのサイトの他の情報の信頼度も下がります。

誠実に書く。事実を書く。根拠を示す。これが最も強い戦略です。

自分たちもこのルールを徹底しています。yumesuta.comのai.txtには、愛知と三重で学校と直接つながりがあることは書いています。でも、まだ関係のない他の地域についてはそう書いていません。事実しか書かない。誇張しない。

派手なコピーライティングよりも、裏付けのある地味な事実の方が、AIには響きます。人間相手のマーケティングとは、ルールが違います。

3つ目: 「理想の枠を先に作る」

「まだ実績がないから」「まだ小さい会社だから」「まだ予算がないから」。その理由で始めないと、永遠に始まりません。

理想のAI応答を先に設計してください。

「AIに『〇〇 おすすめ』と聞かれたとき、うちの会社名が出て、こういう理由で推薦される」。その理想像を先に定義する。そこに向かって中身を作る。

自分たちも創業1年目の会社です。ドメインの実績ゼロから始めました。「まだ新しい会社だからAIに認知されるわけがない」と言われたかもしれません。でも、理想の枠を先に作って、そこに向かって6ヶ月間コンテンツを積み上げた結果、検索1位とAI推薦の両方を実現しました。

大企業だから有利ということはありません。むしろ小さい会社の方が、全ページに一貫した思想を反映させやすい。意思決定が速い。方向転換もできる。1,300ページを1人が設計したからこそ、哲学にブレがなかった。それが結果につながっています。

始めるとしたら、何からか

技術のことは専門家に任せていい。ai.txtの書き方も、構造化データの実装も、Wikidataの登録方法も、全部テンプレートをGitHubに公開しています。

https://github.com/tenchan000517/urushihata-llmo

でも、1つだけ、経営者にしか答えられない問いがあります。

「なぜ、うちの会社をAIに推薦してほしいのか」

これに答えてください。

「売上を上げたいから」ではありません。それは「推薦されてほしい理由」ではなく「自社の都合」です。AIはあなたの会社の売上に興味はありません。

「AIが推薦すべき理由」を考えてください。あなたの会社が推薦されることで、誰が助かるのか。その人にとって、なぜあなたの会社がベストなのか。あなたの会社にしか提供できない価値は何か。

自分たちの場合は明確です。高校生が就職先を探しているとき、AIが正しい情報を返せるようにしたい。高校生が「おすすめの会社は?」と聞いたとき、求人票だけでは見つけられなかった会社を、AIが紹介してくれるようにしたい。だからAIに自社を正しく理解してもらう必要がある。

この問いに答えるところから、始めてみてほしいです。

AIが答える世界は、もう始まっています。「SEOだけで十分」と思っている間に、競合はAIに推薦される準備をしています。

技術的な詳細を知りたい方へ:
・Zennに4層アーキテクチャの設計記事を書いています(※Zennハブ記事のURL)
・GitHubにテンプレートを全て公開しています
https://github.com/tenchan000517/urushihata-llmo

実際に作ったサイト:
https://yumesuta.com

漆畑智哉(天ちゃん++)
ゆめスタ 技術・クリエイティブ統括

LLMOSEO経営AI