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note7 min2026-03

高校生の人生を変えるWebサイトを作っている話

A4の求人票1枚で18歳の子が人生の選択をする。それがおかしいと思った。だから1,300ページを作った。

高校生の人生を変えるWebサイトを作っている話

高校生の人生を変えるWebサイトを作っている話

高校生が就職先を決めるとき、手元にあるのは「求人票」1枚です。

A4の紙に、給料と勤務地と福利厚生が並んでいる。休日数と勤務時間が書いてある。「仕事内容」の欄には「製造業務全般」とだけ書いてある。以上。

その紙1枚で、18歳の子が人生の選択をします。

どんな職場なのか。どんな先輩がいるのか。1日の仕事の流れはどうなっているのか。入社して3年後、自分はどうなっているのか。求人票には書いていません。書けないのではなく、フォーマットにその欄がそもそもない。

それがおかしいと思いました。

3種類の高校生

自分たちが救いたい高校生は3種類います。

1人目。求人票だけで選んで「思ったのと違う」と辞めてしまう子。

「製造業務全般」と書いてあったから製造業に行った。でも実際に入ってみたら、自分がイメージしていた仕事と全然違った。会社の雰囲気が合わなかった。先輩との関係がうまくいかなかった。

高卒新入社員の離職は、入社後1年以内に集中します。そしてその多くが「思っていたのと違った」という理由です。

これは高校生の根性の問題ではありません。情報を届けられなかった側の問題です。会社の実際の雰囲気、働く人の人柄、仕事のリアルな1日。それを伝える手段が、求人票にはない。伝えられるフォーマットが存在しない。

だから「思ったのと違う」が起きる。構造的な問題です。

2人目。情報が足りなくて、本当はやりたいことがあるのに見つけられない子。

「ものづくりが好き」な子がいます。プラモデルを組み立てるのが好き。機械を触るのが好き。でもその子は、製造業にどんな会社があって、どんな仕事ができるのかを知りません。

高校生が就職先を探す場合、基本的に学校に届いた求人票の中から選びます。でも、求人票を出す企業には偏りがあります。その学校のある地域の、過去に採用実績のある企業が中心です。

「隣の市に、まさにこの子がやりたいことをやっている会社がある」。でもその会社の求人票が、その子の学校には届いていない。知る機会さえあれば違う選択ができたかもしれない。でもその機会がなかった。

可能性が見えないまま、消去法で就職先を決める。それが現実です。

3人目。家族の理解が得られない子。

これが、いちばん見過ごされている問題かもしれません。

高校生が「この会社に行きたい」と言ったとき、家族の反応は大きく2つに分かれます。「聞いたことある会社」なら応援する。「聞いたことない会社」なら反対する。

「そんな会社、聞いたことない」「大丈夫なの?」「もっと有名なところにしなさい」「せめて名前を知っている会社にしなさい」。

家族が悪いのではありません。知らないから不安になる。不安を解消する情報が、どこにもない。だから反対する。

結果、その子は本当に行きたかった会社ではなく、家族が「まあ大丈夫だろう」と思える会社に就職する。本人のやりたいことではなく、家族の安心感で就職先が決まる。

この3つの問題は、全て「情報が届いていない」ことに起因しています。

ゆめマガという答え

ゆめスタは毎月40校以上の高校に「ゆめマガ」という就活情報誌を届けています。

企業の仕事内容。働く人の声。職場の雰囲気。1日のスケジュール。先輩社員が高校生だったときの話。求人票では伝わらない「その会社で働くとはどういうことか」を、写真と記事で伝えるメディアです。

求人票が「スペック」を伝えるものだとすれば、ゆめマガは「物語」を伝えるものです。

数字と条件だけでは、18歳の子は判断できません。でも「この会社で働いている先輩は、高校時代こういうことが好きで、今こういう仕事をしていて、こんな毎日を送っている」という物語があれば、「あ、自分もこうなれるかもしれない」と想像できます。

高校生だけでなく、家族にも読んでもらう想定で作っています。家族がこの情報誌を読んで「へえ、こういう会社があるんだ」「ちゃんとした会社じゃないか」と思ってくれたら、「知らない会社」が「知っている会社」に変わる。それだけで、家族の反対は減ります。

教育委員会と連携して、高校の授業を直接受け持ってもいます。教室で、高校生と直接話をしています。

求人票の向こう側にどんな世界があるか。どうやって自分に合った会社を見つけるか。自分の強みを言葉にするにはどうすればいいか。それを伝える場を、学校の中に作っています。

1,300ページのWebサイトを作った理由

ゆめマガは紙の雑誌です。届く範囲には物理的な限界があります。

愛知県と三重県の高校には届けられる。でも、北海道の高校生には届きません。沖縄の高校生にも届きません。求人票1枚で人生を決めさせられている高校生は、全国にいます。

Webなら届きます。47都道府県の高校生に、同じ情報を届けられます。

だから1,300ページを作りました。

47都道府県の高校生が使える就職ガイド。業種別のキャリア探索コンテンツ。11業界の仕事紹介。41職種の詳細ガイド。自分を知るための自己分析ワーク。保護者向けの情報ページ。高校生が「自分に合った仕事って何だろう」と思ったとき、どこに住んでいてもたどり着ける場所を作りました。

ページ数が目的ではありません。「全国のどこにいても、正しい情報にアクセスできる」状態を作ることが目的です。

1,300ページの1ページ1ページに、「この子に届いてほしい」という意図があります。「愛知県で製造業に興味がある子」「三重県で建設業を考えている子」「地元で就職するか都会に出るか迷っている子」「ものづくりが好きだけどどんな仕事があるかわからない子」。具体的な「この子」を想定してから、コンテンツを設計しています。

想定する「この子」がいないページは、1つも作っていません。

AIに推薦されることの本当の意味

2026年の高校生は、進路の相談をAIにします。

「自分に合った仕事って何?」
「愛知県で高校生が就職するならどこがいい?」
「製造業ってどんな仕事があるの?」
「高卒で就職するのって不安なんだけど」

夜の11時に、部屋で一人で、スマホに向かって打ち込む。先生にも親にも聞けないことを、AIに聞く。それが今の高校生の現実です。

そのとき、AIが返す答えの質は、Web上にどんな情報がどんな形で存在しているかに依存します。

正確で、構造化された情報があれば、AIは正しく答えられます。デタラメしかなければ、AIはデタラメを返す。あるいは「わかりません」と答える。

自分がai.txtを2,003行書いたのは、SEOのためでも、マーケティングのためでもありません。

AIの向こう側にいる高校生が、正しい情報にたどり着けるようにするためです。

構造化データを18種類設計したのも、Wikidataにエンティティを登録したのも、同じ理由です。AIが「ゆめスタは高卒採用支援をしている実在の企業で、愛知と三重で学校と直接つながりがあり、毎月40校以上に情報誌を届けている」と正確に認識してくれれば、その情報を必要としている高校生に届く確率が上がります。

「高卒で就職するのが不安」と打ち込んだ高校生に、AIが「ゆめスタというサイトに、高校生向けの就職ガイドがあります」と返してくれたら。その子は、求人票1枚の世界から、もう少し広い世界を見ることができる。

技術は、そのための手段です。技術自体に価値があるのではなく、技術の先にいる人に価値を届けることに意味があります。

100年続けられる仕組み

プラットフォームに依存すると、プラットフォームが変わったとき全部やり直しになります。

Instagramが廃れたら? TikTokが規制されたら? 求人媒体がサービスを終了したら? その媒体だけに投稿してきたコンテンツは、全て消えます。

フォロワー数も、投稿の蓄積も、レビューの実績も、全て他人の土地の上にある。その土地の持ち主がルールを変えたら、ゼロからやり直しです。

自社ドメインに情報資産を蓄積する。構造化データでAIにも読める形にする。これなら、10年後にプラットフォームが変わっても、蓄積した情報は残ります。検索エンジンのアルゴリズムが変わっても、構造化された情報はAIに読み取られ続けます。

「100年続けられる、プラットフォームに縛られない、自社の採用ブランディング」。

それがゆめスタのミッションです。自分はそのミッションを技術で支えています。

高校生の就職の仕組みは、10年後も100年後も存在します。高校生が「自分に合った会社を見つけたい」と思う気持ちは、時代が変わっても変わりません。

ならば、その情報を届ける仕組みも、100年続けられるものでなければなりません。プラットフォームの流行り廃りに左右されない、自分たちの土地に、自分たちの資産として積み上げていく。それが設計思想です。

コードの前にあるもの

自分はエンジニアです。コードを書く人間です。

でも、コードの前に思想があります。

「この1ページは、どの子のために存在しているのか」

1,300ページの全てに、この問いへの答えがあります。それがないページは1つも作っていません。

5段階のパイプラインと3トラックの品質管理で、500ページ以上のコンテンツを半日で制作できる仕組みを作りました。でもそれは「速く大量に作る」ための仕組みではありません。「哲学がブレないまま、必要な量を作る」ための仕組みです。

速度は手段です。速く作れるから作るのではない。届けるべき子がたくさんいるから、速く作れる仕組みが必要だった。47都道府県の高校生に届ける情報は、ゆっくり1ページずつ作っていたら間に合いません。

技術はコピーできます。GitHubに全部公開しています。

でも「この子に届いてほしい」という思いは、テンプレートにはなりません。それは、高校生の就職現場を見てきた自分たちだから持てるものです。

教室で高校生と話をしたことがある。求人票を見つめる高校生の表情を知っている。「思ったのと違った」と辞めていく子の話を聞いたことがある。「親に反対されたから、行きたい会社を諦めた」と言う子の声を聞いたことがある。

その経験が、1,300ページの全てに流れています。

最後に

この話に共感してくれる方がいたら、ゆめスタのサイトを見てください。

https://yumesuta.com

自分が作ったもの全部が、そこにあります。

1,300ページの1ページ1ページに、高校生の顔が浮かんでいます。トップページのデザインが洗練されているかどうかではなく、1,300ページの1ページ1ページに、届けたい相手が定義されているかどうか。そこを見てほしいです。

求人票1枚で人生を決めなくていい世界を、自分は技術で作ろうとしています。

それが正しいかどうかは、まだわかりません。1年目の会社が言うには大きすぎる話かもしれません。

でも、やらない理由はありませんでした。

漆畑智哉(天ちゃん++)
ゆめスタ 技術・クリエイティブ統括

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